皆さんは「組織文化」という言葉を聞いて、どのようなことを連想されるでしょうか?ミッション、ビジョン、バリュー、クレド、行動規範(Code of Conduct)、など様々な言葉が頭に浮かんだのではないかと思います。
おそらく皆さんの中にも、これらを明文化して、社員への浸透を進めている方も少なくないかもしれません。
経営学では組織文化を、「その組織で共有されている価値観と規範」と定義しています。ここで言う価値観とは「皆が何を大事と考えているか」、そして規範は「良しとされる態度と行動」を意味します。
一般的にミッションとビジョン、そしてバリューは「一つの塊」だと考えられます。ミッションは組織または個人が「この世界で果たすべき役割」であり、ビジョンは具体的に「何を通してその役割を果たそうとするか」、そしてバリューは「その役割を果たす道中で優先すべきこと」です。
このように整理してみると、組織文化はバリューと密接に繋がっていることが分かります。また、組織文化は皆が毎日どのような姿勢で仕事し、行動しているかを端的に示すものとも言えます。
例えるならば、氷山の海面上に出ていて外からでも見えるところが、ミッション、ビジョン、バリューで、海面下の見えないところが組織文化ではないかと考えています。
前の記事で、VUCA化した社会の背景には、グローバリゼーションとテクノロジーがあると説明しました。
国内市場の縮小と海外でのM&A、外国人幹部の登用、女性のリーダーシップ、ソフトウェアやデータに関わるエンジニアの重要性、スタートアップとの協業、ミレニアル世代やジェネレーションZの採用…。これらは多かれ少なかれグローバリゼーションの進展とテクノロジーの発展に対応するための施策と言えるでしょう。
また、これらの施策は組織の中におけるダイバーシティ、即ち多様性を高めるものと捉えることが出来ます。日本ではダイバーシティは「女性リーダーの登用」と理解されがちですが、より広義に、組織の中に異なる文化(価値観と規範)を持った個人やグループが同じ存在することと理解するのがあるべき姿だと思います。
組織の中に異なる文化を持つ人が増えれば、当然、摩擦が生じ、解決のためのコミュニーケーションに割く労力が増えます。しかし、ここで努力を怠ると、組織が分裂してしまうことも最悪あり得るのです。
では、どのようにすれば、異なる文化を持った個人やグループが、組織のミッションとビジョン、バリューに沿って意思決定を行い、行動することができるのでしょうか?
この問いに対する一つの答えが“組織文化の共有”です。バリューを明文化し、それを体現する日々の態度や行動を推奨することで、異なる文化を持つ個人やグループを有機的に繋げ、一つの組織としてまとまりを作っていく、そんなイメージです。
加賀谷順一 (かがや・じゅんいち)
IESEビジネススクール エグゼクティブ教育部門アジア統括