MBA

2019年5月、IESE Business School(イエセ・ビジネススクール)のフランツ・ホイカンプ(Franz Heukamp)学長が来日しました。ホイカンプ学長は、これまでに5回来日し、自ら地下鉄を乗りこなすほど東京にも詳しく、富士山に2度も登った経験を持つ親日家です。

六本木ヒルズ内にあるIESE東京オフィスの会議室で和やかなムードの中、IESE のMBAプログラムの特徴、日本人受講生の様子やプログラムの強み、今後のアジア展開の戦略などについてお話を伺いました。

 

IESE MBAに所属している日本人在校生、及び、日本人卒業生について、どのような特徴を見出されていますか。また、どのような期待をされていますか。

日本人の学生の特徴としてまず思い浮かぶのが、「強い好奇心」、そして「学ぶ意欲」に溢れていることです。このことは、他人から学び続けることが期待される将来のビジネスリーダーにとって大変重要な素養だと思います。また、周囲、チーム、そして自分が働く組織に対する「貢献する意欲」と、「勤勉さ」も日本人の特徴でしょう。自分の経験を仲間に共有するために準備を入念にしたり、自己犠牲をいとわないのも日本人学生の特徴のように思います。

世界中の国々から集まるIESEの学生には、出身国を問わず共通した特徴があります。それは、「多様性を受け入れ楽しむこと」、「他人を尊重する態度」、そして「周囲にポジティブな影響を与えること」です。MBAの1年目には、多様性が最大限考慮された8-9名のチームに自動的に各学生が割り振られ、授業の予習のために毎朝75分このチームで必ず会うことになりますが、そこでそれらの真価が試されます。日本人の学生の場合、英語の能力のせいではなく、自我を表に出すのを控えたり会話に割って入るタイミングを一層慎重に見計らう文化的土壌があるためか、円滑にチームワークとコミュニケーションできるまでに多少時間がかかる学生もいます。しかし大概の場合、プログラムが進むにつれてコミュニケーション力を驚くべき速度で高めていきます。

MBAプログラムの最後には、2年生の日本人学生が主体となってJapan Trekという日本ツアーを開催しています。MBAクラス全体の2/5近くが参加し、日本にやってきて、日本の企業を訪問したり、伝統や文化に触れる経験をしています。このトレックは、IESEで催されるあらゆるトレックの中で最大のもので、日本のプレゼンスの大きさが示されています。

学生に期待することは、全ての学生に対してですが、「自分が全てを知っていると思わないこと」ですね。MBAというのは一人で完結できるようなプログラムではありません。受講者それぞれが、互いに刺激しあい、他の受講者から吸収しあうのがMBAプログラムのあるべき姿です。IESEのMBAプログラムは非常にグローバルで、約60か国から学生が参加しています。国籍やバックグラウンドの異なる他の学生からも、多くのことを吸収してもらうために、好奇心と学ぶ意欲を持ち続けて欲しいと思っています。

 

 

 

昨今ビジネスで求められる「社会貢献(Social Contribution)」や「アントレプレナーシップ(Entrepreneurship)」といった分野に、IESEは従来から力を入れています。これらを重視されてきた理由は何でしょうか。

まず社会貢献に関しては、ビジネスで成功すること、それ自体が社会貢献であることを理解してもらうためです。成功したビジネスがなければ、社会が上手く回ることはありません。富が創造さなければ、持たざる人に配分してあげることもできません。成功したビジネスは、社会の発展に欠かせないものです。

IESEのMBAで学ぶ将来のビジネスリーダーは、卒業後、遅かれ早かれ責任あるポジションに就きます。そうすると、仕事を作り、学びの環境を社内に整え、コミュニティに対しても責任を負う立場になります。そして、それらを十分に踏まえて「良い仕事」をする必要があります。そうすることで、自ずとビジネス上の結果がついてくることになります。そのため、IESEのMBAプログラムでは、こういった観点を踏まえてビジネスで成功することの意義を理解してもらうことに多くの時間を割いているのです。

アントレプレナーシップは、社会におけるダイナミックなビジネス環境を創造するために、大変重要な要素です。新たに会社を立ち上げるだけでなく、大企業の中でも新しいアイデアを生み出すという意味においても、非常に重要です。起業家精神を持ち続けることにより、激動する市場で求められている真のニーズを探り当て、新しいサービスや製品の開発、強いては新しい仕事の創出につながるからです。

1970年代から、MBAの科目として、アントレプレナーシップ・プログラムを開始しましたが、時代に合わせて、夏季休暇期間中の起業体験プログラムであるSummer Entrepreneurship Experienceなど新たな要素を組み入れ、卒業生の起業活動を財務面から支援するベンチャーキャピタルであるFinavesを拡張させたり、サーチファンドに関する世界の最先端の動向を研究したり独自のカンファレンスを開催する等、継続的に発展させています。卒業後10年以内に独自であるいはパートナーとして起業する学生が約1/3というのも、強いデータです。

 

 

IESE MBAプログラムのアジア戦略についてお話しいただけますか。

IESEのMBAプログラムの約25%の学生はアジア出身です。加え、卒業後も15%弱の学生はアジアで働きますし、我々はアジアの国々に高い関心を抱いています。

IESEのMBAプログラムを受講すれば、アジアのビジネスリーダーに会えたり、アジアの様々なビジネスについて学ぶ機会を得られます。実際、アジアのシニアビジネスリーダーをキャンパスに招き、Global Leadership Seriesと呼ばれるランチョンの機会に講演をしてもらうようお願いすることもあります。また、アジアの企業が多く参加し、アジアで就職したい学生とのマッチングとの機会となっているAsia Career FairやAsia Career Summitも例年開催しています。

但し、我々が目指しているのは、アジアに特化するのではなく、グローバルにバランスの取れたプログラムです。MBAプログラムを通じてヨーロッパやアメリカなどの国で国際的な経験を積ませ、最終的に学生自身が選んだ市場にアクセスできるようにすることに重点を置いています。アジアはもちろんのこと、ヨーロッパでの仕事、アメリカでの仕事など、世界で活躍できる人材を育成するグローバルなMBAプログラムを目指しているのです。

 

 

IESEの学位プログラムについて、MBAプログラムの15ヶ月版やMaster in Management(MiM)の導入といった今年からの取り組み以外に、今後、新しい取り組みを計画されていますか。

例えば、私達は、IESEのMBAプログラムを卒業して3年後に、全員をバルセロナキャンパスに招待し、2日間のモジュールを提供することを最新の取り組みとして開始しました。MBA Career Checkpointという名前のプロジェクトで、MBA Class of 2016向けに、ちょうど本日実施される予定です。

このプログラムでは、卒業生が2日間、キャンパスに戻って、当時の同級生と共に、卒業後3年の間に達成したことや直面した困難についてじっくり語り合ったり、キャリア関連のワークショップに参加して次のキャリアステージについて思いを馳せたり、グローバル経済の最先端や変化するマネジメントに関する教授陣の講義を受けたり、卒業時から一新されたキャンパスをツアーで周ることができます。これは、卒業後の同窓会とは別の内容で、参加費は無料です。

 

 

 

フランツ・ホイカンプ(IESE学長)

ドイツ出身。マサチューセッツ工科大学工学博士。
IESEで意思決定論を教える傍ら、事務局長やMBAプログラム担当副学長を務めるなどして、2016年より現職。
企業経営者にとって最適な意思決定とは何か、不確実性の下での意思決定について行動経済学と脳科学の分野から探求するのが専門。また、国別の幸福度についても研究している。IESEの学長としては以下の4つの柱を自らの任務として掲げている。
・IESEの活動範囲の一層の国際化
・高齢化社会における生涯教育の提供
・マネジメント教育、リーダーシップ研修のデジタル化
・社会へのインパクト