MBA Class of 2020のTulio Pradoが寄稿しました。原文(英語)はこちらをご覧ください。
MBAの旅路の終わり近くに、学年全体が新型コロナウィルスのパンデミックに驚かされました。家に数週間滞在することを余儀なくされ、友人が採用プロセスを進めていくのに苦労しているのを見ました。同時に、我々は皆、健康危機が続く数か月の、経済に与える実際の影響を理解しようと努めていました。MBAの学生として開拓した驚くべきネットワークに依拠して、既に入手可能なデータから洞察を得るために働き、同級生の何人かを招待して、各業界における現在の危機の起こり得る影響を理解する手助けをしました。資料はビデオシリーズで公開され、以下にあるPoets&Quantsの記事にまとめられています。
_____________________________________________________________
2月初旬から、中国を起源とする未知の呼吸器疾患に関する情報が国際メディアに広まりました。数週間後、私のMBAの本拠地であるスペインの全授業がオンライン形式に切り替わりました。懇親会は禁止され、私の卒業旅行は保留されました。余暇に費やせる追加の時間がありましたが、どう活用したらいいのかわかりませんでした。フルタイムオファーのピークシーズンだったので、同級生の採用の見通しに影響を与える多くの各業界での経済的影響を見始めた時、私は自分の自由時間とMBAの期間中に開拓したネットワークを活用して個人プロジェクトを開始することにしました。
私は、MBA後に進学しようとしている業界に危機がどのように影響するかを理解しようとしている仲間の学生たちにも価値を生み出したいと思いました。情報を簡単に提示できること、および他の多くの学生や専門家に情報が届くことを保証するために、Linkedinビデオシリーズが最適な形式であると判断しました。そして、MBA採用に関係があり、COVID危機の影響を強く受けるであろう業界を選択しました。一部の知識はオンラインで見つけることができましたが、別の重要な情報源は、それらの業界でキャリアを積んできた人々の経験に由来していることに気付きました。したがって、両方の情報源を利用したいと思いました。
各ビデオの最初の部分は、業界の一般的な情報と傾向を紹介し、その後、現時点で認識される可能性のある効果について説明することから始まります。第2部では、業界で関連のある経験を持つMBA学生を招き、他の聞き手がより明確に理解するのに役立ついくつかの質問に答えます。総所要時間は、できるだけシャープにするために約15分に制限しました。
テクノロジー、消費財、銀行
最初のビデオでは、おそらくここ数年でMBAの最も潮流と言えるであろうテクノロジー分野の市場について取り上げました。株価に基づいて、大手テクノロジー企業が他の業界よりも速いペースで売り上げを伸ばしており、一般市場よりも危機による悪影響が少ないことを強調しました。また、これらの企業がこの危機を利用して、アプリの監視から一般的なインフルエンザに関する研究プロジェクトに至るまで、ヘルステクノロジーソリューションに多額の投資を行っていることも示しました。インタビューのセクションで、昨夏にGoogleパリオフィスでクラウドテクノロジーを使用してインターンしたIESE MBA Class of 2020のWaina Landauroは、「GoogleやAmazonのような企業は、近年、コアビジネスから多額の現金を蓄積しており、それらを使用して競争上の優位性を維持し、多くの新しい分野でイノベーションを推進しています。健康分野は主要な分野の1つです。 」と強調しています。
2番目のビデオは、消費財セクターに焦点を当てたものでした。この業界は、危機前、危機中、危機後の顧客の行動が異なるため、分析が興味深い業界でした。冒頭で、オフライン(同時期では3%)と比較して、オンライン小売は既にはるかに高い成長率(過去5年間で年間22%)を示していることを示しました。この傾向は、危機中とその後に加速すると予想されます。また、経済が回復し始めたときに消費者の行動が製品ごとにどのように異なるかについて、2003年のSARS危機からどのように教訓を得ることができるかについても説明しました。インタビューセクションでは、アフリカのエボラ出血熱のような感染症の経験があり、ルクセンブルクのAmazon EUで夏のインターンシップを体験したIESE MBA Class of 2020のMadisyn Luと話をしました。彼女は、「今こそ、企業がサプライチェーンネットワークを再評価し、新しいニーズに応じてバランスを取り直す時です。」「ブランドは、顧客とのつながりを維持するために努力する必要がありますが、真実味があり且つ繊細な方法を採る必要があります。」と述べました。
銀行セクターに焦点を当てた3番目のビデオは、経済全体に広がる前にこの業界で発生した2008年の危機と非常に興味深い比較を描写しています。まず、マクロ経済の要因、特に中央銀行によって定義された連邦金利が銀行の収益性にどのように強い影響を与えるかが強調されました。欧州では、これらの金利は金融危機後に発生した拡張主義プログラムから完全に引き戻ることはなく、現在はゼロに近いですが、米国では最近反転した成長がありました。ビデオはまた、各国の銀行が収益への圧力に対処するための強力なコスト削減戦略をどのように実施しているかを示しています(HSBCだけで、昨年、世界中で35,000の雇用を削減しました)。現在シティバンクのロンドンでトレーディングに従事しており、アーリーステージのフィンテックをバックグラウンドとするIESE MBA Class of 2020であるRahul Chatterjeeが、マーケティング部門は危機の中で最初に縮小されることが多いがゆえに、パッシブ投資(ETFなど)によってもたらされた競争の激化が銀行セクターの利益率をどのように下げてきたか、また、ネオバンクが成長する能力をどのように損なう可能性があるか、について話してくれました。
航空、コンサルティング
4番目のビデオでは、間違いなく最悪の打撃を受けている分野である航空に焦点を当てることにしました。世界のGDPの一人当たりの成長からどのように同分野が利益を得てきたか(過去7年間、年2%の成長)を示しました。これにより、航空機の生産が増加しました。それにもかかわらず、3.1%の歴史的に低い利益率と変動する需要および原油価格が、平均して毎年21の航空会社の破産の原因でした。 EasyJetとBritish Airwaysで航空宇宙エンジニアとしての勤務経験を持つIESE MBA Class of 2020とMario Arberyを招いたところ、航空会社がいかに「国家戦略的に重要であり、政府の出資など条件付きではありながらも、殆どが必要に応じて政府によって救済されるか。」について、彼が解説してくれました。大手航空機メーカーで営業/マーケティングを担当する電気技師、Thiago Cazarine氏は、「この危機下では、事業開発関連の仕事が業界で重要になるとともに、適応の必要性があるサプライチェーン管理に関連する仕事も重要になります。 」と説明しています。
5番目のビデオでは、歴史的にMBAの大部分を採用しているセクターであるコンサルティングに焦点を当てました。提示された基本情報は、グローバルコンサルティング市場がさまざまな慣行にどのように分割されているかを説明しています。オペレーションと財務アドバイザリーが最大であり、人事部門が最も急速に成長しています(過去5年間、年間5%)。また、市場がどのように特定の地域(北米が49%、欧州が総収入の28%)と特定の国(米国が45%、ドイツとイギリスが各7%)に強く集中しているかについても説明しました。
公表されているデータが不足していることを考えると、この分野への影響の規模とタイミングを理解することには課題があります。危機前の2020年の予想と比較して、グローバルコンサルティング市場の売上高は300億ドルまたは19%が打撃を受けると予想するSource Global Researchの予測を私は示しました。同じ予測は、コンサルティングプロジェクトを開始する業界間でこの効果がどのように異なるかを示しています。航空会社やレジャー等の分野で予想される最大の打撃として、手数料が28%減少することが予想されています。McKinseyとBCG(編注:双方、東京オフィス)の両方でサマーインターンを体験し、IESE MBA Class of 2020の一員であるSandeep Yellaとのインタビューで、彼は次のように述べています。「次の採用プロセスでは、ポジションがより競争的になる可能性があるため、さらに一歩進んで目立つことが重要です。ネットワーキングを強化したり、面接スキルを磨いてチャンスを増やしてください。」
このプロジェクトは私に貴重な教訓を教えてくれました。 1つ目は、ネットワークを通じてアクセスできる多くの知識と支援があることです。特に、MBAの環境では、各分野の経験を持つ専門家に囲まれています。 2つ目は、短期的に私たちの職業生活における新型コロナウィルスの結果が何であるかを正確に知ることは難しいかもしれませんが、企業や採用担当者から引き出すことのできる貴重なサインがあり、それによってリソースを割り当てる方法を考えることができます。 そして、3番目の、そしておそらく最も重要な教訓は、新型コロナウィルスは困難な課題をもたらすだけでなく、危機は同様の困難を経験する多くの人々に利益をもたらす小さな取り組みを行う機会も生み出すということです。
*Tulioが取り組んでいる各動画については、以下をご参照ください。