バルセロナからシンガポールへ:INSEADプロダクトゲームズ2025優勝までの道のり

原文(英語)は、こちらをご覧ください。

 

応募総数85件。名門MBAスクールから選ばれた4つのファイナリストチーム。そして、ひとつの世界的舞台。

私たち IESE の チーム・バルセロナ は、シンガポールで開催された INSEAD プロダクトゲームズにおいて 優勝 という栄誉に輝きました!IESE からはこの9年間の大会史上、初めてファイナリストに選出され、さらに優勝したチームとなりました。

これは単なるケースコンペティションではなく、東南アジアのテック業界の複雑さ、そして巨大テック企業である Grab を深く探求する旅でした。私たちの能力を大きく引き出し、チーム力、ユーザーへの深い共感、そして少しの AI の力があれば何でも可能であることを証明してくれる経験でした。ここでは、IESE のカフェテリアでの深夜のアイデアから、INSEAD アジアキャンパスでの最終プレゼンまでの道のりを振り返ります。

この経験は、これまでの MBA 生活の中でも間違いなくハイライトのひとつとなりました。

 


モチベーション:テクノロジーへの共通の好奇心

私たちのチームは、テクノロジーとプロダクトマネジメントというダイナミックな領域への共通の関心から結成されました。メンバーはそれぞれ異なるバックグラウンドを持っていますが、純粋なテック職やソフトウェアエンジニア出身者はいませんでした。

ウダイ がチームをまとめた中心人物でした。バルセロナセクションで ハニフ と同級生であり、BSP(Business Spanish Program)で モニカ ともつながりがあった彼は、私たちの多様な視点が大きな力になると感じていました。こうして私たちは、自分たちのアイデアが実社会で通用するかを試すべく、このコンペティションに挑むことにしました。

 


課題:Grab エコシステムの最大化

今回のチャレンジは偶然の産物でもありました。東南アジアを代表するスーパーアプリである Grab に新規提案をすることが求められたのです。

モニカとハニフにとって、これは非常に身近なテーマでした。東南アジアで育った彼らは、Grab を日常的に使い、その生活への影響もよく知っていました。だからこそ、単なる新機能ではなく、Grab とそのユーザー双方にとって真の価値を生み出す提案をしたいという強い思いが生まれました。

私たちが提案した GrabTrade は、まさにその理解から生まれたものです。Grab が持つ既存のスーパーアプリエコシステムを活用し、インドネシアのWarungやフィリピンのSari-Sari storeといった伝統的小売が直面する 「低マージン流通危機」 に対処する B2B の新規バーティカルを提案しました。

 


ファイナルへ:20時間の移動が勝利に変わるまで

バルセロナからシンガポールまでの移動は、片道20時間という長旅でした。

しかし幸運にも、ドーハ〜シンガポール便はほぼ貸し切り状態で Wi-Fi も完備。私たちは機内を即席オフィスに変え、プレゼンのブラッシュアップ、財務モデルの調整、ピッチデッキの磨き上げに全力で取り組みました。

シンガポールに到着した瞬間、その長旅は一気に報われました。世界中のトップMBA校の学生と交流し、大舞台で自分たちのアイデアを披露し、Google、Stripe、Grab などのプロダクトリーダーとネットワークを築くことができたのです。

 


直面した課題とハイライト:AI を駆使した “バイブコーディング”

最大の壁は、私たちに技術的なバックグラウンドがなかったことでした。最終ラウンドでは 機能するプロダクトのモックアップ を提示する必要があったのです。

そこで私たちは創意工夫を凝らし、最新の AI ツールを活用して、いわば “バイブコーディング” によって動作するプロトタイプを作り上げました。自分たちのコンセプトがスクリーン上で形になる瞬間は、非常にエキサイティングでした。

最大のハイライトは、優勝そのものだけでなく、私たちのアプローチに対して審査員の方々から高い評価をいただけたことでした。この経験を通して得た学びは、私たちのキャリアにおいて大切な道標となるでしょう。

 


得られた4つの重要な教訓

1. アイデアの確立には時間がかかる(それでいい)

コンペを知ったのは締切の2週間前。最終的なアイデアが固まったのは、提出のわずか4日前でした。

東南アジアの FMCG 業界で働いた経験を持つモニカの洞察は重要でした。課題が現実的でインパクトのある問題であることを理解していたからです。時間はかかりましたが、そのプレッシャーが私たちを集中させてくれました。

 

2. ローカルへの洞察が鍵

これが私たち最大の武器となりました。単に資料を作るだけでなく、実際のディストリビューターやSari-Sari store、Warungの店主に直接話を聞きました。これらの会話によって得られた定性的データや深い共感は、私たちの提案が「机上の空論ではない」と示す大きな裏付けとなりました。

 

3. 革新とは “新規技術” のことではない

私たちの提案は、最先端技術を新たに発明することではなく、Grab がすでに持つ強力なサービス(物流、決済、データ)を賢く組み合わせ、未開拓の巨大機会を見出すことでした。真の革新とは、既存の点を新しい形でつなぎ合わせることなのです。

 

4. メンターの存在は何よりも貴重

私たちは決して一人では戦えませんでした。リーヌス・ヒエタニエミ教授からの専門的なご指導、
2年生の ミゲル による Loveable の実践的なレクチャー、そして Grab のメンター ゼーリン・シュウ からの献身的なフィードバック。皆さんのおかげで、私たちのピッチは磨かれ、プロダクトマーケットフィットを確信することができました。

 


IESE の未来の参加者・志望者へ:迷ったら「挑戦する」一択

もし同じような大会への参加を迷われている方がいたら、私たちからのアドバイスはひとつです。ぜひ挑戦してください。

私たちも最初は「技術的なバックグラウンドがない」という不安を抱えていました。しかしすぐに気づきました。IESE の多様性こそが大きな強みであることを。コンペティションは、授業で学んだことを実践し、レジリエンスを鍛え、世界的なネットワークを広げる最高の場です。

不安があっても、立ち止まらないでください。同級生を頼り、教授やメンターの知見を最大限活用し、挑戦を楽しんでください。勝ち負けに関わらず、得られる成長は計り知れません。

今回の勝利は、多様なチームの力、顧客への深い共感、そしてビジネスの洞察と最新技術を掛け合わせることで生まれる可能性を示すものです。私たちは、これからの未来に大きな期待を抱いています。

 

チーム・バルセロナ(文責:モニカ・ベレン、ハニフ・ラマダン、ウダイ・ゴーヴィル — MBA Class of 2027)