2020年のオリンピックに先立ち、2019年にはアジアで初めて日本でラグビーのワールドカップが開催されました。前回大会に続いて、日本代表チームが優勝候補を破り、予想以上の盛り上がりを見せたのは、皆さんもよくご存じのことと思います。
今大会では、日本代表チームは“ONE TEAM”という言葉を合言葉とし、様々な出身国の選手たちを一つにまとめ、戦い抜きました。スポーツにおける組織作りにも、ビジネスに応用できることがたくさんある。そんなことを再認識させてくれた大会でした。
さて、私が勤務しているIESEの本部は、サグラダ・ファミリアで有名な、スペインのバルセロナにあります。そして、バルセロナには世界最大のサッカークラブ、FCバルセロナが本拠地を構えています。
2018年11月に「The Barcelona Way: Unlocking the DNA of a Winning Culture」という本が出版されました。著者はスポーツ心理学と組織変革が専門のDamian Hughes(ダミアン・ヒューズ)という、マンチェスター・メトロポリタン大学の教授です。
著者は、組織心理学の観点からFCバルセロナの強さを紐解き、その源泉がFCバルセロナの組織文化にあると説明しています。そして、FCバルセロナがそうした組織文化をいかに生み出し、継承、発展させてきたのか、そのメカニズムも明らかにしています。
この本の日本語版として、今年6月に「FCバルセロナ 常勝の組織学」が出版されました。日本語版の解説を書かれたのが、元早稲田大学ラグビー部の監督で、U20のラグビー日本代表監督も務めた中竹竜二さんです。中竹さんは、現在、日本ラグビーフットボール協会のコーチング・ディレクター(コーチのコーチ)を務めながら、自身の経験を活かして企業のリーダーシップ育成にも尽力されています。
その中竹さんがバルセロナにいらっしゃるというので、IESEにご訪問頂き、IESEでFCバルセロナのことを研究している教授達とお話をしていただきました。その中に、マーク・ソスナという、IESEでLearning Innovation Unitというチームを率いている人物がいました。
彼のチームはIESEにおける「学び」を研究開発しており、様々なアクティブラーニングの手法を有機的に組み合わせることで、大人の学びを最大化する「モザイク」というアプローチを提唱しています。
マークは、日本企業の研修プログラムのために9月に来日し、中竹さんと一緒に、アカデミーヒルズで開催された「FCバルセロナのウイニングカルチャーから学ぶ」というフォーラムに登壇しました。
このフォーラムは、FCバルセロナの常勝のカルチャーを学びながら、企業の“組織文化”について考える素晴らしいセッションとなりました。
最後に、IESEのエグゼクティブ教育プログラムでは、企業幹部の方々を、サグラダ・ファミリアやFCバルセロナなどにお連れし、ミッション、リーダーシップ、組織文化について考えるワークショップも提供しています。
加賀谷順一 (かがや・じゅんいち)
IESEビジネススクール エグゼクティブ教育部門アジア統括