IESE初のInter-MBA Search Fund Competitionの裏側

 

バティスト・デュプラン(MBA Class of 2026)が寄稿しました。原文(英語)は、こちらをご覧ください。

 

IESEは長年、欧州におけるサーチファンドの基準となる存在でした。今年、私たちはそのリーダーシップを実践的な経験に変えたいと考えました。

私は IESE Search Fund Clubの運営チームの一員として、IESE史上初のInter-MBA Search Fund Competitionの企画・立ち上げを主導する機会をいただきました。学生の自主的な取り組みとして始まったこの企画は、すぐに投資家、オペレーター、そして欧州各地から集まったMBA学生を結ぶ大規模なエコシステムイベントに発展しました。

 


エンジニアリングから買収を通じた起業家精神へ

IESEに来る前、私はパリで情報システム工学を学び、その後シドニーで Esker のフルスタック・デベロッパーとしてキャリアを始動させました。豪州で2年間過ごした後、フランスに戻り、大企業のデジタルトランスフォーメーションプロジェクトにおいてITアーキテクトとして助言を行う仕事に従事していました。

私は常に起業家精神に惹かれていましたが、全く新しい事業を一から始めることは、自分の性格には完全には合わないと感じていました。3年前に私は Entrepreneurship Through Acquisition(買収を通じた起業) に出会いました。当初は直感に反するように思えました ― なぜ優秀なプロフェッショナルが堅実なキャリアを捨てて、小さく伝統的な企業を買収するのでしょうか?

サーチファンドモデルを学べば学ぶほど、その魅力は増していきました。既存で収益のある企業を買収し、経験ある投資家の支援を受けながら所有と経営のリーダーシップを発揮できるという構造が非常に説得力を持っていたのです。

MBA選択の際、IESEは サーチファンド・エコシステムに深く根ざしていること、そして起業家共同体の力が強いことから、私にとってひときわ魅力的でした。

 


なぜInter-MBA Search Fund Competitionを立ち上げたのか

IESEはこれまでに多くの成功したサーチャーを輩出し、ヨーロッパ中の投資家・オペレーターとの強いつながりを保ってきました。しかし私たち学生としては、そのエコシステムをより実体験として体験できるものにしたいと感じていました。

このアイデアはSearch Fund Club 内での会話の中で勢いを得ていきました。決定的な瞬間は、著名なサーチファンド投資家であるホセ・マルティン・カビエデス氏とのディナーの席でした。着想を共有した際、彼はすぐに前向きな励ましをくれて支援を申し出てくれました。その後押しが、私たちを実行へと駆り立てました。

最初から、コンペティションを インターMBA(複数MBA校参加型) とすることにしました。欧州の主要ビジネススクールを集めることで、学びの質が高まり、そしてIESEがサーチファンド・エコシステムの中心に位置することを示せると考えたからです。

IESE校内ではまず予選ラウンドを開催しました。予想を大きく上回る 12チームの応募 があり、学生の間でサーチファンドへの関心が高まっていることを確信しました。選抜されたIESEチームは、その後 LBS、INSEAD、HEC Paris、IMD、ESADE からのチームと共に競いました。

 


コンペティション形式

私たちの目的は明確でした。それは、 1日という限られた時間の中で、実際のサーチファンドの旅路を可能な限り忠実に再現することでした。

実際にサーチファンドによって買収された 2つの実在企業がターゲットとして選ばれ、事前にチームにはその 財務データと運営データ が提供されました。チームは以下を準備しました:

  • 体系立てられたデューデリジェンス質問リスト
  • 各企業に対する 意向表明書(LOI)案
  • 各ターゲット企業についての 投資戦略プレゼンテーション

 

 

当日は分析、交渉、評価という濃密な一日となりました。

コンペティション当日の4つのステージ:

  1. デューデリジェンス・セッション
    チームは実際にそれら企業を買収・経営したオペレーターと対面しました。
    オペレーター役は デイビッド・ジャック氏と マルク・ラスコルツ・フロリット氏が務め、それぞれ異なるスタイルで売り手役を演じました。
    チームは仮説を検証し、リスクを探り、リアルタイムで戦略を修正しました。
  2. LOI交渉ラウンド
    チームは売り手役オペレーターと主要な条件面について交渉を行いました。
    ここでは評価額のロジックや資本構造、ガバナンス、アラインメント(利害整合性)についての議論が行われました。
  3. 投資委員会プレゼンテーション
    各チームは投資家パネルの前で最も支持する買収案を発表しました。
    投資家からはリスク評価、価値創造、資金調達構造、実行能力について厳しい質問がありました。
  4. 最終審査
    審査員は分析の厳密さ、適応力、現実味、戦略的思考の明瞭さなどを評価しました。

これは単なる理論的なケーススタディではありませんでした。学生はリアルなオペレーターやデータ、そして実際の投資家の目にさらされる体験をしたのです。

 


投資家とスポンサー

このコンペティションの信頼性は、欧州のサーチファンド・エコシステムを代表する主要メンバー達の参加によって担保されました。

投資家パネルには以下の方々が参加しました:

彼らは当日を通してチームの議論や交渉を観察し、最終プレゼンテーションでも鋭い助言を送ってくれました。単なる審査員ではなく、参加者へのメンターとしても大きな役割を果たしてくれました。

またIstria Capital、Cabiedes & Partners、ANIOL Family office、Albira Investmentsといったスポンサー企業の支援にも深く感謝しています。スポンサーの存在が、コンペティションの信頼性と深みを支えました。

 


コンペティションを支えたチーム

この企画を主導したのは私ですが、コンペティション自体は完全にチームの協力によって成り立ちました。

IESEサーチファンド・クラブ のチームメンバーは以下の通りです:

  • 辻井 大喜
  • エステバン・セッツァー
  • レティ・ロザ
  • ロドリゴ・ティノコ
  • ビセンテ・イリサール・ガルサ
  • ルイ・レベローデ
  • アレック・ケアニー

彼らは参画校や投資家とのコーディネーション、オペレーターとの連携、広報・ロジスティクス管理など、重要な分野を担いました。またクラブの会長であるルイス・サウセドと アンドレス・リンセはエコシステム全体へのアクセスと支援を得る上で重要な役割を果たしました。

IESE MBAオフィス(特に パウラ・エストラーダ氏とステフ・テイト氏)には継続的なガイダンスと運営支援をいただき、心から感謝しています。

 


成果と結果

分析、交渉、プレゼンテーションという濃密な1日を経て、IESEチームとIMDチーム が 共同優勝という結果になりました。

 

優勝の理由は、単なる準備だけではありませんでした。財務面のロジック、運営への理解、そして対話を通じて戦略を柔軟に修正する能力を両チームが示したことが評価されたのです。

印象的な出来事として、審査員側の投資家自身が、最終的に両チームが勝者として完全な賞金を受け取れるように手を差し伸べたことがありました。これは審査員自身がコンペティション全体への関与と熱意を示した象徴的な瞬間でした。

 


なぜIESEにとってこのコンペティションが重要なのか

参加者からのフィードバックで最も強かったのは、この体験が最もリアルなサーチファンドの旅路に近いものだったという声でした。多くの学生が、MBAプログラムの一環としてではなく、実際のサーチファンドの挑戦を体感する機会を得たと語っていました。

IESEにとって、このコンペティションは単なる成功したイベント以上の意味を持っています。それは、サーチファンド分野における学校のリーダーシップが、教授や卒業生だけでなく、学生自身の力によって積極的に支えられていることを示すものです。

これは今回が初回の開催でしたが、今後もさらなる改善と拡大を継続していく予定です。

私個人として、このコンペティションの企画・運営は MBA生活の中で最も重要な経験の一つ となりました。そしてそれは、着想を信じ、正しい人たちに囲まれれば、教室を超えた取り組みを実現し、エコシステム全体に意味ある貢献ができるということを改めて実感させてくれるものでした。

そしてこれこそがIESEがサーチファンドの欧州における動きを先導していくということなのだと思います。