「指揮」によるケースメソッドを基盤にしたIESEの授業(強力な学習法)

 

IESEは、教授法のケースメソッドスタイルへ重きを置いていることでよく知られていますが、他のビジネススクールと比べてどのように違うのでしょうか。

この投稿では、MBA&MiMの入学審査チームの一員であるルイス・ゴー博士が、ケースメソッドを基盤にした授業の概要と、この教授法が際立っている理由についての彼の意見をご紹介します。

原文(英語)はこちらをご覧ください。

 


「ハーバードスタイル」のケースメソッドを基盤にした授業の意味

「ハーバードスタイル」のケースクラスは、ケースの数とケースメソッドを基盤にした授業の提供方法の2つの側面に分解されます。

数量は、プログラムで使用されるビジネスケースの量に関係します。

私の意見では、「ハーバードスタイル」とは、プログラムの授業の大部分がケースを通じて提供されることを意味します。

IESEでは、約80%です。

数値的には、400以上のケースです。

通常、ケースクラスの「ハーバードスタイル」の提供方法とは、「振付」を伴うケースメソッドを基盤にした授業を指します。

以下にて、一層完全な説明をしましょう。

 


異なる種類のケースメソッドを基盤にした授業とそれを指揮すること

教育学的には、4つの異なる種類のケースメソッドを基盤にした授業があります。具体的には、説明、理論化、講義、振付です(カストゥリ・ランガン、1995年)。最初の3つは教師中心のアプローチとして分類でき、最後の1つは学生中心のアプローチとして分類できます。

ここでは、用語について簡単に説明します。私の意見では、「指揮」という用語は「振付」よりも適切です。結局のところ、教室の設定は、ダンスの編成というよりは音楽的なアンサンブルに似ています。また、振付師というよりも、ケースメソッドを基盤にした授業の教授は、授業への参加を通じて学生が音楽を制作している折に指揮するオーケストラの指揮者に似ています。この記事では、「指揮」が「振付」という用語の代わりに使用されます。

最初の3つのタイプ、つまり、説明、理論化、講義では、教授は授業の進行と議論の流れを一層細かく制御する傾向があります。コンテンツを提供するために、教授は学生からの最小限の参加を必要とする設定された議題に従うことができます。学生は受け身の受信者になる傾向があります。これらの種類のケースメソッドを基盤にした授業は通常、学習者間の相互作用が最小限であるため、学生の構成または多様性は学習にほとんど影響しません。

一方、「指揮」によるケースメソッドを基盤にした授業の本質は、授業中の学生からの高いレベルの関与です。学習は彼らの積極的な参加を通して起こります。

「おそらく、ケースメソッドの教育学的な最大の利点は、学習過程に高度に関与することです。人々は、最も深く関わっているものから最も多くを学びます…学習手段としてのケースの効果的な使用は、授業への参加に大きく依存します」(レイモンド・コリー、1976年)。

教育理論では、多くの場合、受動学習よりも能動学習が推奨されます。調査によると、学生は学習過程に積極的に関与しているほど、学びは、より良質で、より深く、永続的です。 (ブード等、1985年; ブルックフィールド、2010年;  ノウルズ等、1998年; メジロー、2000年)。

「…(「指揮」によるケースメソッドを基盤にした授業での)交流と建設的な議論を通じて、学生は分析スキルを構築し、判断力を養い、概念的な理解を得ます。また、厳密な思考を促進し、コミュニケーションスキルを高めます」(レイモンド・コリー、1976年)

 

 

「指揮」によるケースメソッドを基盤にした授業は、ビジネスを学ぶ学生のための強力な学習方法です。それはまた、教授に対してより厳しいものです。ケースメソッドを基盤にした授業は、ケースの理解、その背後にある理論、およびケースの学習ポイントだけでなく、一層重要なことに、ケースメソッドを基盤にした授業自体の間に、学生を巻き込み、無数の予想外の回答に細心の注意を払い、「自分の足で考える」ことができることが求められます。議論への学生の積極的な参加により、授業の流れは一層予測不可能になります。教授は柔軟性があり、自発的なインプットと学生からの着想を統合できるように授業を調整する準備ができている必要があります。議論の流れを学習点に向けながら、議論から生じる予期しない洞察を、教授は認識する準備ができています(ロドリゲス、2005年)。そして、学生の知性とビジネス文化とマネジメント経験の多様性を活用する相互学習環境を醸成して維持しようとします(アップルゲート、1988)。

「教室でのやり取りは大量のエネルギーを消費します。過程(議論を構成するアクティビティの流れ)とコンテンツ(議論を構成する内容)に同時に注意を向けるには、知的な関与だけでなく感情的な関与も必要です…教授は、プランナーでもありホストでもありモデレーターでもあり少数意見の擁護者でもあり学生の仲間でもあり判事でもあるので、混乱を招きかねない役割を一通り担う存在とも言えます。議論の指導は自発性を管理する技術であるため、最も熟練したグループリーダーでさえ不確実性を受け入れ満足している必要があります。」(クリステンセン、1991年)

 


プログラムの約80%が「指揮」によるケースメソッドを基盤にした授業により提供される

各種MBAプログラムは、使用されるケースメソッドを基盤にした授業の種類だけでなく、ケーススタディ手法の利用レベルも異なります。

「指揮」によるケースメソッドを基盤にした授業は、経営教育を提供する唯一の方法ではありません。今日では、シミュレーション、モデリング、コーチング、プロジェクトも行っています。ケーススタディはビジネスの問題を個別にではなく、常に他の全ての構成要素、ビジネスの多様な側面、一層重要なことに、ビジネスの問題の文脈に関連して検討するため、従来の講義に対するその優位性を否定することは困難です。「指揮」によるケースメソッドを基盤にした授業は、実際には、実際のビジネス問題を解決する経験です。

「指揮」によるケースメソッドを基盤にした授業がプログラムの80%近くを占めるようになるためには、方法論に習熟している相当数の教授が必要になります。したがって、そのような高いレベルを達成できる機関はほとんどありません。教育スタッフの間で、この方法論の専門知識の開発に投資するという、組織からの長期的な取り組みが必要です。学生に可能な限り最高の準備を提供するための組織としての方向づけと、学生が経営を学び健全な意思決定スキルを身に付け、長期的なグローバルビジネスリーダーシップに備えるためにはこれが効果的な方法であるという揺るぎない信念が不可欠です。

 

 


チームレベル及び教室における相互的かつ集中的学習を通じて強化される学生のグローバルな視点

 

IESEでのケースメソッドについての学生がどのように捉えているかについて詳しくは、このビデオをご覧ください。

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