卒業生の活躍:金水文平さん(MBA Class of 2016、スポーツビジネス)

バルセロナを本拠とする、欧州トップクラスのビジネススクールであるIESEビジネススクールのMBAを2016年に卒業した後、外資系投資銀行勤務を経て、Jリーグのサッカーチーム、V・ファーレン長崎をグループ会社に持つジャパネットホールディングスにて経営戦略部の責任者として活躍する金水文平さんに、これまでの足跡と今後の展望について伺いました。

 

 


中学三年時にフットサルチーム運営会社を起業

私は子供のころからサッカーが大好きでした。中学一年まではクラブチームに属し、サッカー選手という夢を目指していたのですが、中学二年生のときに自分のレベルでは選手としてプロになることは難しいと自覚しました。

そこで、コーチや審判など、別の形でサッカーを仕事にしたいと考えました。そんな中、地元大阪に拠点があるJリーグクラブのスタッフと触れ合ったときに、クラブ運営という選択肢を見つけたのです。その後、サポーターたちと交流して、共に勝敗に一喜一憂しているうちに、その選択肢はどんどん魅力的になっていきました。

中学三年時に、アマチュアフットサルチームの運営事業を起業しました。起業という手段をとったのは、未成年ゆえの信用不足を、会社設立によってカバーしようと思ったからです。

その後、7年間マネジメント側の立場にいたのですが、最後の2年間にリーマン・ショックおよび経営を困難たらしめる外部環境に直面し、経営者としての資質不足を痛感することになりました。その資質の中でも、自分個人がビジネスパーソンとして色々な強みを身につけ、自分の言動に説得力を持たせることがまずは必要だと感じ、日系大手金融機関へ入社し、5年ほど法人営業を中心に担当しました。

 


海外MBAを取得しに、IESEビジネススクールへ

5年間で金融機関の担当者レベルの基礎は学べましたが、次の段階として経営者レベルで思考できるようになるために、MBA取得を目指そうと考えました。

サッカークラブのような様々なステークホルダーがいる環境で意思決定ができるよう、多様性溢れる環境で自分を磨きたく、特に海外MBAを志向しました。

海外MBAの中でIESEビジネススクールを選んだ理由は、(1)ジェネラルマネジメントに強く、(2)元々の価値観が異なる多国籍・多様な職歴の学生の中で合意形成する機会が多く、(3)家族が生活を楽しめそうな場所にある学校だからです。

 

 

 


家族の理解

留学に際して、大手金融機関を退職すること、学費を自分で工面することなど、家族にも理解してもらわなければならないことはありました。

私には妻と二人の子供がいます。妻には、Jリーグのクラブ運営に携わりたいという中学生からの夢を早い段階から伝えていて、妻はそのための私の努力を側でずっとサポートしてくれています。海外MBA取得についての構想も同じく伝えていたのですが、2013年に2人目の息子が産まれた際に、色々な事情を踏まえると今が最後のチャンスだと伝えた時も、妻は改めて応援したいと言ってくれました。

結果、2014年から家族4人でバルセロナに渡り、IESEビジネススクールで学ぶことになったのです。

 


IESEビジネススクールとサッカー

IESEビジネススクールに入ってみると、入学前には予見していなかった大きな機会がありました。

バルセロナには、強豪FCバルセロナ以外に、エスパニョールというラ・リーガの古豪クラブがあります。そのエスパニョールの副会長が、IESEビジネススクールのMBAプログラム全体統括者でもあるカルロス・ガルシア・ポント教授だったのです。

そこで彼のサポートのもと、エスパニョールに対してビジネスプロジェクトを実施する機会を手に入れたのです。そのプロジェクトはクラブの国際化に関わるもので、クラブと海外スポンサーとの提携や、海外からの観光客誘致プロジェクトなど、在学中に明確な成果を出すことができました。

 

 


IESEビジネススクールでの鍛錬

IESEビジネススクールで2年間を過ごして良かったと常々感じることが3つあります。

まず、2年間で700超にもわたるビジネスケースを読み、分析したことです。ケースは実際に過去にビジネスの文脈で発生した状況を、時には人間の感情等も交えながら幅広い観点から描写したものです。そんなケース内の主人公に自分を置き換えて、多様な業界での様々な役割・立場を仮想経験できました。そういった訓練を経たおかげで、今、常に相手の立場を推し量りながら仕事を進めることができていると感じます。

そして、毎朝チームメンバーとディスカッションを行ったことです。チームメンバーは国籍もバックグラウンドも全く異なる8人からなっており、一年間固定です。それぞれの利害関係者の立場を尊重しながらも実現したい方向に物事をしっかり動かしていく訓練として最適で、それは同じように今の仕事の進め方にも活かされています。

最後に、毎日心が折れそうになりながらも努力し続けたことが自分の財産、どんな厳しい状況でも頑張り続ける原動力になっています。IESEビジネススクールに入学した当初は、授業の議論についていくのも、70名のクラスメイトと教授の前で授業中に発言するのも、とても大変でした。ただ、授業に参加しないとその場にいる意味が全くないと考え、入念な予習に基づき積極的に発言し続けていました。その結果、周りも少しずつ自分の努力を認めてくれるようになりましたし、個人として、物事を考える速度も、英語力も上がっていったのを覚えています。

 


外資系投資銀行を経て、ジャパネットホールディングスへ入社

卒業後、外資系投資銀行というプロフェッショナルな環境で金融・財務およびプロジェクトマネジメント能力を更に鍛えた後、ジャパネットホールディングスに入社しました。

ジャパネットホールディングスは、2017年にV・ファーレン長崎というJリーグクラブをグループ会社化しています。数あるJリーグクラブ運営会社の中でも、ジャパネットホールディングスに惹かれた理由は大きく3つです。

まず、長崎県に本社を置く会社が同じ県のクラブを保有するという夢に共感したことです。縁があって、ジャパネットホールディングスの髙田旭人社長と出会い、その時の夢を語る姿に強く共感したのを今でも覚えています。

次に、V・ファーレン長崎の髙田明社長が尊敬できる方だと感じたことです。通信販売分野のカリスマ創業者が全く異なる分野のサッカークラブ経営に挑んだこと、そして昨シーズンにはクラブのJ1昇格を成し遂げたこと、更にクラブの中に挑戦する機運を生み出していること、など知れば知るほど尊敬できる方だと思いました。

最後に、当時から長崎に新スタジアムを建設する計画があり、もう一段階上のクラブを実現する挑戦への期待感を感じていました。

 

 


現在の仕事内容と今後成し遂げたいこと

私個人の仕事内容としては、入社してからは、V・ファーレン長崎のクラブ運営に関わり、現在は、他事例研究や新技術導入の検討を含むスタジアム関連の仕事、更には全社の財務と管理会計の仕事となります。最近では、建設の迫っているスタジアム関連の仕事の割合が増えてきました。クラブ運営の経験を活かして、より良いスタジアムを創っていきたいと思っています。

中長期的には、アジア最高峰のスタジアムを創ることが私の目標です。それは、長崎らしさに溢れ、サッカーを快適に見ることができ、かつ、スタジアムに来る人がワクワクするスタジアムです。同時に、 V・ファーレン長崎の経営にも関わり、アジアの頂点を一緒に目指していきたいと思っています。