卒業生の活躍:富士宗一郎さん(MBA Class of 2015)

日本国内で経営コンサルタントとして4年半のキャリアを積んだ後、欧州トップクラスのビジネススクールであるIESEビジネススクールのMBAプログラムを2015年に卒業し、以降、世界最大手の総合化学会社であるBASFのドイツ本社にて、インハウスコンサルタントとして活躍し続ける富士宗一郎さんに、これまでの足跡と今後の展望について伺いました。

 

そもそもなぜ海外MBA

海外MBA出願当時から、日本以外で働くキャリアに強い興味があったためです。海外MBAがなくてもそれを実現できる可能性はあったかもしれませんが、トップクラスのビジネススクールを卒業することにより、その可能性を大きくしたいという思いが強かったです。

ビジネススクールでは一緒に学ぶ学生から学ぶ量・時間が圧倒的に多いので、ビジネススクールの質には強く拘りました。また、卒業後には多様な人々に揉まれながら働きたかったため、米国の学校よりも多様性の高い欧州の学校を選びました。その中でもIESEビジネススクールは、ジェネラルマネジメント、リーダーシップに強いことで定評があり、自分の志向に合っていると考えました。また、IESEビジネススクールは勉強の負荷が他校よりも高く、その環境は自分に成長の機会を多く与えてくれました。

 

日系企業からの海外赴任か外資系企業の日本国外拠点か

私は、IESEビジネススクール入学前に、外資系企業の日本拠点で経営コンサルタントとして既に働いていたので、海外MBA後のキャリアとして同じように外資系企業の日本拠点で働く可能性は考慮していませんでした。

代わりに、日系企業からの海外赴任と外資系企業の日本国外拠点の2つを検討しましたが、やはり他の社員との均衡や給与水準という点からか、日系企業の海外MBA生向けの就職の機会は当時かなり限られており、さらに入社早々に海外派遣するといったものはほとんどなかったと記憶しています。実際、一部の商社が唯一の例外ではないでしょうか。それでもIESEビジネススクール入学前には、海外で働きたいという思いがありつつも、一方で日本企業のために働きたいという思いも確かに強くありました。ただ、IESEビジネススクールで学ぶ中で心境が少しずつ変わっていきました。具体的には、世界50カ国以上から多様な学生が集まる中で、彼らの価値観や実現したい夢に感化され、一層グローバルなフィールドで価値を出せることの方が魅力的だと考えるようになったのです。結果として、日本人としてIESEビジネススクール入学前に積んできた経験と、自分ができることを世の中に還元したいという思いを踏まえて、外資系企業の日本国外拠点にて、日本人ならではの自分の色を出していきたいと考えるようになりました。

 

海外就職のための努力

外資系企業の日本国外拠点で働く機会は、海外のビジネススクールといえど、ただ待っているだけで舞い込んでくるものではありません。そのため、IESEビジネススクール入学早々から、海外就職を実現するために出来ることは試していきました。

まず、海外求人案件に対して、合計100件以上応募しました。また、LinkedInを駆使しつつ、IESEビジネススクールの卒業生30人以上と個別に話しました。彼らから、キャリアに関するアドバイスをいただいたり、実際の状況を伺ったりしたことは、大変重要なインプットになりました。更に、IESEビジネススクールが主催するキャリア関連のイベントには全て出ました。年2回バルセロナキャンパスで開催され計50社超の企業が採用目的で参加するキャリアフォーラムや、毎年シンガポールで開催されアジアに拠点のある計20社超の企業と学生のマッチングを図るアジアキャリアサミット等です。

間接的な努力としては、IESEビジネススクールが提供するケースコンペティションにたくさん参加して、成長機会を得、経験を重ねることを意識しました。ケースコンペティションとは、実際のビジネスの場で起きている課題を企業がビジネススクールに持ち込み、それぞれのテーマに関心のある学生が有志で5人程度のチームを組み、そのお題に対しての解決策を1週間程度の短期間で練り、企業にプレゼンし、チーム間で競う、課外活動です。結果、いくつかのコンペティションで優勝することが出来、実際にCVに経験として追加記載することも出来ました。更に、積極的に他国籍の学生と、各企業の情報収集を中心とした意見交換をしたり、一緒に面接の準備をしたりしました。

 

BASF本社への就職

こういった活動の過程で、自分がやりたいこと、現実的にできることが見えてきました。

10年ないし20年経った時に自分が携わっていて良かったと思える分野に携わりたいと思ったので、人の生活の基盤になるような業界、具体的には農業系か医療系か化学系に絞り込んでいきました。また、世の中に少しでも大きなインパクトを出せたらということで、会社の規模の大きさも一つの重要な要素だと考えました。

一方で、自分のこれまでのバックグラウンドから極端に違う仕事に転向するのは難しいということも活動をしていく中で理解していきました。働く場所・業界・職種という3つの切り口でキャリアを見た時に、働く場所を変える以上、職種を入学前に行なっていたコンサルティングという仕事にするか、もしくはその中で携わってきたプロジェクトのトピックに沿ったものにする方が良いだろうと考えました。

最終的には、ドイツの総合化学会社BASFへ、社内コンサルタントとしての入社を決断しました。これらの条件にマッチする求人案件の中で、1日に集中して面接を7回も、別々の方と会う形で実施頂き、人を見ることを大切にする会社であるという印象を持ったことが決め手でした。

 

インハウスコンサルタントとしての勤務・日常

私は現在BASFのコーポレート部門にあるインハウスコンサルティング部署で働いています。これは、企業が会社内に独自にコンサルティンググループを設立しているもので、クライアントは社内のトップマネージメントや他の部署となり、実はドイツではよく見かける形態です。部署に所属する多くの社員は元々外部のコンサルティング会社での経験があり、そのスキルに加えて、社内のカルチャー、人からビジネスに至るまでの実態を幅広に熟知していることを強みにして、実際の実行プランまでしっかりと意識したコンサルティングサービスを提供しています。

コンサルティングというとハードワークのイメージが強いかもしれませんが、会社全体の方向性に沿ってワークライフバランスは非常に意識されており、18:00-19:00頃には同僚のほとんどがオフィスを退出、お子さんの送迎のための早期出社・早期退社もフレキシブルによく行われています。

 

海外就職・勤務・生活の難しさ

海外MBAという肩書きだけでは、海外就職を実現することは到底困難です。こと海外MBA卒業後の学生の日本市場での売り手市場傾向と比較すると、海外、特に欧州で日本人あるいはアジア人として採用されるというのは、完全に対極な環境と言えます。海外ビジネススクール入学直後から、その受験以上に大変な就職活動を開始する必要があります。

次に、実際の海外勤務自体についてですが、やはり非常にタフではあるものの、やり甲斐の大きさも感じています。英語力は言わずもがなですが、いざ働いてみると、文化の違いによる働き方や考え方の違いに直面することも多々あり、日本人としての自分らしさを失わず、他方で相手の文化を許容していくことは簡単なことではないと、未だに苦戦することもあります。しかしその中で、日本で鍛えられたコンサルタントとしてのスキルや、IESEビジネススクールでの他国学生たちとの過ごした濃密な経験に助けられることは多々あります。また、自分が欧州の企業で日本人として働くことの意味を深く考える必要がある機会も多々あります。その独特な立場から、会社にとって、短期的・長期的にいかに有益な仕事をできるかという点を考え抜くことも大事でしょう。

プライベートな面では、ドイツで妻と二人で暮らしています。IESEビジネススクールのあるバルセロナでも2年間共に暮らしましたが、同じ欧州とはいえ、言語と文化が違う場所に自分の事情で妻を連れてきてしまっているので、その変化のために迷惑をかけてしまっています。ただ、妻は、ドイツ語習得に非常に熱心で、既にドイツ語を駆使して仕事を始めています。妻の前向きな心持ちには本当に助けられています。今後の妻のキャリアをどう形成するかも含めて家族としてどうしていくかということは、状況に応じて話し合いながら決めて行く予定です。

 

海外就職によって得られるもの・気付き

自分の能力を客観的に見てみると、英語力、グローバルな環境でのリーダーシップ双方において、圧倒的に幅が広がっています。

また、仕事の進め方も、自分の過去の経験に基づく手法以外の選択肢に気付かされ、それを受容し自分の新しい手法として取り組むことができているのは貴重だと思っています。例えば、私の職場では、チームとして仕事の完成度を80%にするまでの速度がとても早いです。下準備の段階で完成度を30-40%に仕上げておき、その完成度を高めることに主眼を置いた討議の場で完成度を80%にまで高め、それでその仕事は良しとします。ワークライフバランスは、こういった仕事の進め方の結果でもあると思います。仕事の完成度に100%以上を常に求め、そのために相当な労力を費やすことの多い日本の仕事の進め方とは大きな差があります。

 

今後のキャリア

今後のキャリアについては、色々な可能性が考えられます。ドイツのBASF本社で3-4年更に働いた後、他の地域あるいは日本に戻り本社での経験を還元する、あるいは、BASF本社に更に10年くらい残って本社ならではの仕事で会社にインパクトを出す等です。

5年前の大きな目標だった海外就職を実現することはできましたが、この先もグローバルな環境に常に身を置き、その場で自分がすべきこと・できることを深く考え、自分ならではの価値を少しでも多く出せたらと思います。