本稿は、IESE MBAアドミッションの西田が執筆しており、IESE MBAと日本人学生というカテゴリーにおける連載の一環です。
IESE MBAには、例年10-15名程度の日本人学生が入学しており、この数は全体の規模からしても決して小さいものではありません。本稿は、そのように日本人がなぜ求められているかを学業面から読み解く記事です。
学生の成績は制度上非開示で私ですら正確なものを知ることはできませんが、日本人学生が学業面で存在感を示していることは様々な周辺情報から推察されます。
IESE MBAの中核をなす教授法(学習法)はケースメソッドで、そこでは70名程度の学生が集う教室の中で教授から学ぶよりも異なるバックグラウンドを持つ学生から学ぶ/学生同士で学ぶ色が圧倒的に強くなります。
そして成績評価の一定程度(科目に関わらず総合的に平均すると40%程度)がその空間での学生個人としての発言によるものであり、更に言えば、それは質と量の両面でバランスよく考慮されます。
こんな環境で、私が指摘した良い成績を日本人学生として取ることは簡単ではないと思われるかもしれません。
しかし、多くの物事に当てはまることですが、パフォーマンスの総合値は、概ね1. 能力と2. モチベーションの掛け算で決まる可能性があります。
1. 能力については、色々分解の仕方がありそうですが、元々の1-1.ケースに活かせるビジネス経験と1-2.発言力に分けられそうです。
1-1.ケースに活かせるビジネス経験については必ずしも国籍差は大きくなさそうで、業界差を度外視すればむしろ就業年数の多さが影響する印象です。
そう仮定すると、入学時の平均就業年数が世界全体では5-6年なのに対して日本だと7-8年程度であることを踏まえれば、就業年数が長いほどケースで使える経験の引き出しが増える可能性があるゆえ、日本は多少優位かもしれません。
1-2.発言の力については、1-2-1.英語力と1-2-2.英語力以外に分けられ、おそらく1-2-1.英語力では日本人は平均的に劣後するでしょう。
しかしここで極めて重要なのは1-2-2.英語力以外の部分についてで、日本人学生は発言回数こそ多くないものの、他国比で十分に考えた上で発言する傾向があり、結果として発言の質が高く評価されることが少なくありません。
日本人学生が発言する時は、何か大事なことを言いそうだと周りも期待値を持つので、注目度が上がるというのは極めて一般的です。
また、2.モチベーションについても日本人が強い面に思われます。
日本人学生は、他国比で圧倒的な自己規律能力を誇ります。
人間の自然なモチベーション曲線として、時間が経てば経つほど、同じ事柄については慣れもあいまってモチベーションは少しずつ低下していきます。
しかし、他国の学生を雑に括り彼らを短距離走の強者と定義するなら、日本人学生はマラソンの強者と定義できます。
したがって、周囲のモチベーションが下がってきた頃に日本人学生が周囲の尻たたき役として継続的に活躍できることが往々にあり、この側面は学校からも大変重宝されています。
更に言えば、時間軸が後ろになればなるほど日本人学生の英語力も上がってきますので、1-2-1.英語力の不利も減っていきます。
例えば、MBA Class of 2025では海外経験が文字通り皆無ないわゆる純ドメの中の純ドメの2名が、2年目にそれぞれChicago BoothとKelloggで交換留学を経験しました。
交換留学は、最初の2学期の成績が高い順に優先選択権が与えられ、30校程度の選択肢のうちこれら2校は人気が相当高い部類に区分されます。
そこに、純ドメの中の純ドメの2名が飛び込むことができたのです。
マラソン型を体現した彼らの努力とそれによる結果は心の底から賞賛しますし、次世代にとって励みとなる正の遺産を残してくれました。
このような実例は決して偶然ではありません。
日本人学生が持つ経験、発言スタイル、自己規律能力は、ケースメソッドを中心とするIESEの学習環境と高い親和性を持っています。
そのためIESEでは、日本人学生がクラス全体の学習体験を向上させる存在として期待されています。

