MBA Class of 2025のユソク・コが寄稿しました。原文(英語)はこちらをご覧ください。
まず、これまでのご経歴と現在について教えてください
2013年に、韓国の公的な資産管理機関である韓国資産管理公社(KAMCO)に入社しました。それから10年以上、社内のさまざまな部署で仕事をしてきました。
システム開発プロジェクトやIT関連の契約管理から、国有地、上場有価証券、不良債権、債務再編まで、担当した分野は多岐にわたります。地方本部で勤務した経験もあり、現場の拠点がどのように動いているのかを知ることもできました。
こうした経験を通じて、テクノロジーや業務運営から公的資産の管理、さらには経済的な困難を抱える方々への支援まで、KAMCOという組織をさまざまな角度から見ることができたと思います。
2023年、会社の派遣制度を利用して韓国を離れ、IESEのMBAに進学しました。2025年5月に卒業し、その後まもなくKAMCOに復職しています。
多くの同級生とは違い、私の場合は卒業後に戻る場所が最初から決まっていました。就職活動をする必要も、転職を考える必要もありませんでした。
私にとってMBAは、違う会社に行くためのものではありませんでした。同じ組織に戻るからこそ、仕事やその周りにある世界を、もっと広い視野で捉えられるようになりたいと思っていました。
復職後は人材開発院に配属され、新入社員研修をはじめ、社内外のさまざまな教育プログラムの企画・運営など、人材育成に携わりました。
そこで約10カ月働いた後、人生にもう一つ大きな出来事がありました。2026年3月に息子が生まれ、現在は育児休業中です。
MBAを目指したきっかけと、IESEを選んだ理由を教えてください
KAMCOで10年以上働き、実務経験はかなり積んできました。一方で、経験を重ねるほど「もっと大きな視点から物事を理解したい」という気持ちも強くなっていきました。
幸い、KAMCOの海外研修制度の対象者に選ばれ、いつもの職場をいったん離れて海外で学ぶ機会を得ることができました。
MBAを選んだのは、経営者が意思決定をするときに、ビジネスのさまざまな要素がどのようにつながっているのかを理解したかったからです。それまでの実務経験に、ファイナンス、戦略、オペレーション、経済、アナリティクス、人材・組織といった幅広い知識を結びつけたいと思いました。
つまり、私には「仕事を変えるためのMBA」は必要ありませんでした。
必要だったのは、自分の物事の見方を変えるためのMBAでした。
IESEに特に惹かれたのは、ケースメソッドとゼネラルマネジメントを重視する教育です。
単に理論を学ぶのではなく、十分な情報が揃っていない状況でも自分なりの判断を下し、それをまったく異なるバックグラウンドを持つクラスメートの前で説明しなければなりません。そうした環境に身を置くことで、自分がそれまで知っていた世界の外側から物事を考えることを求められました。
もう一つ、IESEを選んだ理由がスペイン語です。もともと語学を学ぶことが好きだったので、バルセロナで暮らし、現地の文化に触れながらスペイン語を学べることにも魅力を感じました。振り返ってみても、これは海外でMBAを学ぶ醍醐味の一つでした。
卒業後に会社へ戻ることが決まっている中で、MBAをどのように活用しましたか
KAMCOに戻ることが決まっていたからこそ、MBAへの向き合い方も少し違っていたと思います。
就職活動の準備に多くの時間を割く必要がなかったので、その分、自分がこれまで経験してこなかった分野を意識的に学ぶことができました。
今の仕事に直接関係する科目だけを選ぶのではなく、ビジネスパーソンとして使える「道具」をできるだけ増やそうと考えていました。
その意味で、MBAのカリキュラムの幅広さは非常に大きな価値がありました。それまで仕事では体系的に学んだことのなかった分野を勉強し、「これはKAMCOならどう応用できるだろう」と考えることができたからです。
例えば、オペレーションと業務プロセスの最適化です。
私はそれまでにも長年プロジェクトや業務プロセスに関わっていましたが、一つのプロセスを分析してボトルネックや非効率な部分を見つけ、全体のパフォーマンスを高めるために再設計する方法を、体系的に学んだことはありませんでした。
プロセス全体を俯瞰して考える方法を学んだことで、それまで当たり前だと思っていた仕事の見方も変わりました。
「この手順は本当に必要なのか」「もっと効率的にリソースを使えないか」「最終的に、どうすればより大きな価値を生み出せるのか」。そんなことを考えるようになりました。
ニューヨークでの海外モジュールも、とても印象に残っている学びの一つです。
世界の金融をめぐる最新の動向を学びながら、金融市場をそれまでとは違った角度から見ることができました。
しかも幸運なことに、滞在中に米国大統領選挙の投票日を迎えました。米国の経済や金融システムを学びながら、その国の政治にとって極めて重要な瞬間を実際に現地で経験できたことは忘れられません。
金融市場や企業の意思決定は、政治や社会と切り離されたものではないのだと改めて感じました。
ですから私にとって、企業派遣だからMBAにそれほど力を入れなくてもいい、ということではまったくありませんでした。
むしろ企業派遣だからこそ、この機会を違った形で最大限に活用できたのだと思います。
特に大きな影響を受けた国際経験は何でしたか
IESEでさまざまな国際経験をしたことで、「世界について知識として学ぶこと」と「実際にその場所に身を置くこと」はまったく違うのだと実感しました。
NUSへの交換留学では、アジアを代表する金融都市の一つであるシンガポールで生活しました。シンガポールの金融エコシステムについて理解を深めると同時に、東南アジアの多様性も実際に感じることができました。
特に印象に残ったのは、地理的に近いからといって、文化や制度まで似ているとは限らないということです。
同じ地域にある国でも、文化、規制環境、ビジネスに対する考え方は大きく異なります。
この経験をきっかけに、KAMCOが行っている事業や取り組みが他のアジア市場ではどのように受け止められるのか、あるいはどのように応用できるのかを、以前より深く考えるようになりました。
同時に、韓国でうまくいっている仕組みをそのまま別の国へ持っていくだけでは、ビジネスモデルの海外展開はうまくいかないということも強く意識するようになりました。
MBAで得た一番の財産は何ですか
私にとって一番の財産は、出会った人たちと、その人たちによって自分の考え方が変わったことです。
知らないことや難しい問題に直面すると、今でも時々、
「あの人だったら、この状況でどうするだろう?」
と考えます。
これは意外なほど役に立ちます。まったく違う経験をしてきた人たちの考え方を、頭の中で借りることができるからです。
IESEが多様性に富んだコミュニティだということは誰もが知っています。でも、その本当の意味は実際に中に入ってみないと分からないと思います。
MBAを始める前から「Peer Learning」という言葉は何度も耳にしていましたが、「実際にはどういうことなのだろう」と思っていました。
その答えは、教室にありました。
ケースディスカッションでは、クラスメートが「何を考えているか」だけではなく、どうやって自分の考えを伝えるのか、どうやって論理を組み立てるのか、相手の意見にどう異議を唱えるのか、そして自分の意見を否定されたときにどう反応するのかまで学ぶことができました。
まったく違う業界で働いてきたクラスメートが、自分では思いつきもしなかった問題点を指摘することもあります。
また、彼らの職業や文化的なバックグラウンドに触れることで、韓国の外へと視野が広がりました。
KAMCOの事業は他の国でも成り立つのか。成り立たせるためには何を変える必要があるのか。逆に、私たちが韓国で培ってきた経験の中で、他国にも活かせるものは何なのか。そんなことを考えるようになりました。
IESEを卒業した今でも、「あの人だったら、この状況にどう対処するだろう?」と考えることがあります。
ある意味では、必要なときにいつでも引き出せる、さまざまな視点のネットワークが自分の中にできたのだと思います。
MBAで得た知識はこれからも変化し、アップデートされていくでしょう。でも、そこで出会った人たちと、その人たちによって変わった自分の考え方は、これからもずっと大切な財産であり続けると思います。
MBAを終えて会社に戻ってみて、どうでしたか
KAMCOへの復職は、「MBAで自分は本当に変わったのか」を確かめる、ある意味で面白いテストでもありました。
一番大きく変わったのは、どんな問題でも突然解決できるようになったことではありません。
同じ問題を前にしても、以前とは違う問いを立てるようになったことです。
MBA以前の私は、まず、
「この仕事をどうすればうまく遂行できるか?」
と考えることが多かったと思います。
MBAを終えてからは、
「そもそも、なぜこれをやるのか?」
「誰のために価値を生み出しているのか?」
「リソースの配分には、もっと良いやり方がないか?」
「別のステークホルダーから見たら、これはどう見えるのか?」
と考えるようになりました。
MBAで、KAMCOにそのまま持ち帰って使える「正解の公式」を手に入れたわけではありません。
代わりに手に入れたのは、より多くの道具と、問題に向き合うときに異なる分野の知識を結びつけて考える習慣でした。
これは、MBAで得たものの中でも特に実務で役立っていることの一つです。
IESE卒業後の生活はいかがですか
KAMCOに戻って約10カ月後、私の生活は再び大きく変わりました。
2026年3月に息子が生まれ、現在は育児休暇を取っています。
父親になったことで、IESEで学んだことについて改めて立ち止まって考える機会ができました。それはビジネスについてだけではありません。リーダーシップや優先順位、長期的な視点についてもです。
IESEでは、自分とは違う意見を以前より自然に受け止め、自分自身の思い込みを疑い、意思決定が長期的にどんな影響をもたらすのかを考えるようになりました。
こうした姿勢は、仕事以外の場面でも役に立つものだと思っています。
そう考えると、私のMBAは単なる仕事上の経験ではなくなりました。
マネージャーとして、同僚として、家族の一員として、そして今では父親として、自分がそれぞれの役割をどう捉えるかにも影響を与えています。
これから企業派遣でMBAに進む方へ、どんなアドバイスをしますか
まず、MBAを「会社がお金を出してくれる長期休暇」のように考えないことです。
卒業後に戻れる仕事があることは、大きな安心につながります。でも、その安心感は「学ばなくてもいい理由」ではなく、もっと自由に新しいことへ挑戦できる理由にすべきです。
次に、意識して自分のコンフォートゾーンから出てください。
違う業界、違う国のクラスメートと話してください。
今の仕事とはまったく関係のない授業も取ってみてください。
交換留学や海外モジュールにも参加してください。
それまで自分が当たり前だと思っていたことを疑わざるを得ない環境に、あえて身を置いてみてください。
そして最後に、企業派遣だからこそ得られる自由を最大限に活かしてください。
卒業後のキャリアがすでに決まっているのであれば、就職活動に追われる代わりに、学ぶこと、試してみること、そして自分自身を成長させることに集中できる貴重な機会があります。
振り返ってみると、IESEで得た最大の価値は、特定の経営理論や「ビジネスの正解」を覚えたことではありません。
さまざまな分野の知識を結びつけること。
自分とはまったく違う経験をしてきた人を理解すること。
そして、見慣れた問題を新しい角度から見ること。
そうした力を身につけたことだと思います。
私は、卒業後にKAMCOへ戻ることが最初から分かった上でIESEへ行きました。
そして実際に、同じKAMCOへ戻りました。
でも、戻ってきた私は、IESEへ行く前とまったく同じビジネスパーソンではありませんでした。
そしておそらく、IESEから持ち帰った最も大切なものは、たくさんの「答え」ではありません。
より良い「問い」を持てるようになったことなのだと思います。






