日本人受験生の英語運用能力はどこで見られるか: スコアの先にある実践レベル

 

本稿は、IESE MBAアドミッションの西田が執筆しており、IESE MBAと日本人学生というカテゴリーにおける連載の一環です。

IESE MBAには、例年10-15名程度の日本人学生が入学しており、この数は全体の規模からしても決して小さいものではありません。

本稿は、そこに至る受験プロセスにおいて日本人受験生として特に認識しておきたい英語運用能力について考察する記事です。

 


IESE MBA受験における英語運用能力の重要性

入学審査プロセスは、様々な要素が絡み合って最終結果に繋がるものですが、基本的には加点法の要素が大きく、極端な場合を除くと1つの特定の要素のみで合格に至らないというケースは稀です。

したがって、例えば、多少GMATのスコアが悪かろうが、その弱みを他の要素で補い最終的に合格に至ることは十分可能です。

しかし、その限りではない最大にして唯一の例外が本質的な英語運用能力です。

 


なぜ本質的な英語力が問われるのか

他の要素がいかに素晴らしかろうと、本質的な英語運用能力が求められる最低水準に至っていないと合格に至ることは非現実的となります。

「本質的な」をここまで二度使用しましたが、ここには一定の意味合いが隠されています。

ケースメソッド中心の授業、つまり事前のチームワーク及び授業中の参加に耐えられるだけの英語力を念頭に置いて「本質的な」という言葉遣いを選んでいます。

それゆえ、特に英語の四技能のうちリスニングとスピーキングが重要になってきます。

 


英語スコアよりも重視される実際の運用能力

実際の入学審査プロセスでは、これらに力点を置いた観察がなされており、特にビデオエッセイ、インタビュー、アセスメントデイ(クラス参加、グループ討議、グループプレゼンテーション等)でそれらが測られています。

個人的には、英語(IELTS/TOEFL)スコアを少しでも上げようとする努力は尊重するものの、実際の内部の議論で英語スコアは驚くほど議論の対象にならず、英語の運用能力についての議論の中でその影響力は1%未満と言っても差し支えありません。

 


IELTS 7.5と7の逆転が起こる理由

例えば、受験生2名、Aさん(GMAT Focus: 715, IELTS: 7.5), Bさん(GMAT: 545, IELTS 7)がおり、プロフィールの属性・強さは全て同等とします。

(以後、議論を単純化するために英語スコアについてはIELTSのみで議論を進めます)

この2名の間で、ビデオエッセイ、インタビュー、アセスメントデイから測られる英語の本質的な運用能力にそれなりに乖離があり、明らかにBさんが秀でていると判断されたとします。

そうすると、圧倒的に合格に近づくのはBさんとなります。

これは、個人的な目線・嗜好ということではなく、これまでの無数の内部的議論を見ていればあまりに自明な事実です。

いかに本質的な英語運用能力が重視されており他の要素ではその弱みを補いきれないことがこの例に示唆されています。

 


英語に自信がない受験生こそ適切な準備で差がつく

このような指摘をすると、英語に現時点で自信がなかったり海外経験が不足気味な人が勝手に諦めるということが出てくるかもしれませんが、それは極めて安直な思考回路です。

評価対象となる本質的な英語運用能力の中には、実際には表現力・論理力なども含まれてきて、これらは母語である日本語においても個人差が大きく、英語自体への習熟とは必ずしも相関しません。

英語ネイティブでも帰国子女でも苦手な人は苦手です。

また、アセスメントデイは少し毛色が異なる(*)ものの、ビデオエッセイとインタビューは自身について語る場でカバーされるトピックに大きな逸脱がない状況なので、他者との対話を通じてあるいはそれ以外の手段により内省を徹底的に深めることで、アウトプットされる内容の質を高めることもできます。

(*ビジネスに関しての議論でなくても構わないので、外国人に囲まれて日本人として完全アウェーな状況でのグループ討議を行う機会を一定回数作ることをお勧めします)

更に、私は日本人受験生の中で、本質的な英語運用能力という意味で、既述の例のようなIELTS 7.5と7の間の逆転現象を驚くほどたくさん見てきました。

IELTS 7.5の方は、ビデオエッセイとインタビューとアセスメントデイの対策を十分なレベルまでこなせなかったのだろうと推測されますし、IELTS 7の方は逆にそれを十分にこなしたのでしょう。

 


日本人受験生に求められる具体的な対策

対策の方法論は、個別性も強くなるのでここでは深く言及しません。

IELTS 7を7.5に上げるために必要な努力が全く無駄とは言いませんが、だいぶ異なる努力内容が求められるので、余程余力がある/すぐに7.5に上がる確信があるといった状況を除いてそこに時間と労力をかけることはお勧めしていません。

その上で、質量両面での対策が期待される中、一般的にはリスニング/スピーキングの圧倒的な量を一定期間(1か月-数か月)が望ましい印象です。

仕事という最も制御不可能な要素以外の生活の極力全てを英語でこなすことを通常勧めています。

MBA受験生は大変多忙で限られた時間の中でやれることに限界がありますが、情報収集ソースとして日本語を遮断することから、毎日の英会話(+適切かつ強度のあるフィードバック)をこなすことまで色々可能性はあります。

直接リスニングやスピーキングに繋がるものではありませんが、携帯電話の設定を英語にすることなど時間があろうがなかろうが誰にもできます。

私が英語力に不安を抱える日本人受験生から相談を受けた際に、こうしたことあるいはそれに準じる内容を勧めることが多いです。

 


純ドメでも十分に戦える

1-2週間の突貫工事で目に見える成長が感じられるような内容ではないので、もう少し長い期間辛抱強く行動に移すことが期待されます。

上で述べたIELTS 7.5と7の間の逆転現象は、こうした内容を真摯に受け止め愚直に一定期間こなした人とそうでない人の溝によって生まれている部分もあると考えています。

純ドメだろうが何だろうが関係なく、IELTS 7に至っている方であれば、対策次第で十分に対応可能な内容であると確信しています。

IESEではケースメソッド利用とはいえ、米国MBAのような周りの学生が英語ネイティブだらけな環境ではないので、求められる水準も相応に調整されています。

本質的な英語運用能力以外の全てが魅力的である方に合格を差し上げないのはアドミッションチームとしても非常に辛い決断となります。

このような決断を下さなければいけない対象としては日本人受験生が特に顕著で、同じ日本人として応援したい気持ちもある中、このような事例を観察することを極力減らしたいと切に思って本記事を寄稿しました。