卒業生の活躍:倉敷勇人さん(MBA Class of 2017)

欧州トップクラスのビジネススクールであるIESEビジネススクールのMBAプログラムを2017年に卒業し、商社マンから子ども向け英語スクールの起業という道に大きく舵を切った倉敷勇人さんに、その活動内容、そこに至るまでの軌跡・思い、MBAの必要性、今後の展望等について伺いました。

子ども向け英語学校の分野で起業

私は、IESEビジネススクールを2017年に卒業したその直後に、Kids&Usをフランチャイズ形式で日本に持ち込むという形で起業しました。

Kids&Usは、欧州を中心とする非英語圏で成功している子ども向け英語スクールです。幼少期ならではの言語習得のプロセスに基づいた独自の教授法や学習の効果測定など、高い学習効果を生み出すためのあらゆる工夫が高レベルで揃っています。

今の日本の子どもたちには、僕らの世代以上に英語が必要になってきています。その子どもたちが、将来の選択を考え始める頃までに実践的な英語力を身につけるには、幼少期から学習を始めることが不可欠だと考えています。Kids&Usはまさにその課題を解決するものです。

日本進出は、アジアへの初進出事例です。先方にもアジアへ進出したいという思惑は既にあったのですが、アジアに行きたいなら日本から行くべきだ、と、私から激しくプッシュしました。私は日本という世界的に見ても大きな市場の全権を任せてもらっていますが、その交渉ステージに乗せるまでの道のり、交渉ステージに乗った後の道のりすべてが大変でした。そのような中でも、根幹にあった「既存の子ども向け英語教育を変え、日本をもっと世界とつなげたい」という情熱を頼りに、粘り強く取り組むことができました。

数年前までは英語スクールを起業という手段で立ち上げることなど全く考えていなかったのですが、IESEビジネススクールでの経験が私の人生を大きく変えました。

 

商社マンとしてのキャリアと海外MBA

2008年から鉄鋼系商社に入った私は、2010年から香港に駐在していました。香港駐在の中で、MBAを取得したい気持ちが強くなってきました。一つには、自分に足りないスキル、具体的には営業以外のスキルの必要性を感じる機会が多くありました。また、香港はコスモポリタンな都市で、周りにMBAホルダーも多く、彼らから刺激も受け続けていました。その中で、海外駐在の次のキャリアとして海外MBAを自然に考えるようになりました。

学校の選定基準は、より多様な環境の中でリーダーシップスキルを獲得できることでした。営業駐在したアジアと、10歳までの5年間を過ごした米国は既にある程度経験値があったので、未踏の地であり且つ多様性に満ち溢れた欧州にチャレンジしたいという気持ちが強かったです。その中でIESEビジネススクールの、60カ国近くから同級生が集まる環境は魅力的でした。

リーダーシップについては、商社マンとして調整役に回ることが多かったので、どのように自分の色を打ち出しつつチームを率いていくかということを課題に感じていました。IESEビジネススクールの、8-9人の同じチームメンバーで毎朝75分というハードなチームワーク環境ならば、その課題に向き合う機会も圧倒的に多いと考えました。

 

やりたいこととその実現方法の気づき

実は、IESEビジネススクールには当時の鉄鋼系商社から派遣頂いていました。将来日本のためになる仕事がしたいという想いでIESEビジネススクールに行きましたが、まだ当時の視野は狭く、それまでの自身のキャリアの延長で日系企業の海外進出支援、具体的にはM&Aなどを卒業後のキャリアとしてイメージしていました。

一方で、会社の枠を離れて思いを巡らせると、これまでの海外経験の中で、優秀にも拘らず、たかが語学能力のために、本来受けるべき評価を受けられていないビジネスパーソンを多く見てきたので勿体ないなという感覚を持っていました。言語教育には元々興味があり、根本から変えるには子ども時代の教育環境が最も重要であると考えてもいました。

そういう思いを持ちつつ、IESEビジネススクールで1年生時の必修科目として受講した起業関連の授業である「Fundamentals」をきっかけに、起業という選択肢によって、この課題に対応可能ということに気付かされました。

 

起業に海外MBAは必要か

MBAが起業という選択肢を気づかせてくれたという点以外でも、少なくとも自分の場合は3つの理由で必要でした。

1つ目のスキルです、特にリーダーシップに関する部分は既に述べた通りです。

次に、時間です。IESEビジネススクールは2年制MBAプログラムを提供しているのですが、先程述べた1年生の起業関連の授業をきっかけに、本格的な調査を開始しました。そして、1年生と2年生の間の夏休みはバレンシアの織物関連企業で日本市場拡大及び調査に従事するインターンシップを、コンサルティングプロジェクトに近い形で、B to Cに近いビジネスを経験できました。ここでB to Bに比べてB to Cの方が楽しいなということと、営業あるいは戦略実行がやはり好きなんだなと気づきました。そして、2年生時は、起業の選択肢をさらに深堀りするため、「ISP(*)」を活用しました。

*編注:特定の分野における研究やビジネスプラン立案、コンサルティング等を行う「Independent Study Project」。学期中に取り組み、成果を上げることで単位を取得可能。

最後にネットワークです。僕が今回アジアで初めてフランチャイズ化する形で起業した、その対象となった「Kids&Us」の欧州での初期展開を取り上げたビジネスケースの執筆者である教授アレハンドロ・ラゴ、「Entrepreneurial Finance」という2年生の選択授業担当教授のハインリヒ・リヒテンシュタインとルイス・マルティン・カビエデス、「Negotiation」という2年生の選択授業を受講していた同級生、コンサルタント・バンカー・弁護士といったバックグラウンドを持つチームメートには大いに助けられました。そして何より、Kids&Usの日本でのマスターフランチャイズという僕が選んだビジネスは、IESEを通じたKids&Usとの運命的な出会いがきっかけです。

 

家族の理解

IESEビジネススクール留学中、妻はバルセロナで子育てを中心とした生活をしていました。しかし、私が起業をすると決めた後は、妻も元々英語教育への情熱という点で合致していたこともあり、事業パートナーのように協力してくれました。Kids&Usとの契約交渉、締結後の研修には全て積極的に出席してもらっていました。交渉相手の細かな言動、反応など、心理的洞察の面で非常に助けられました。さらに、卒業間近まで進路が決まらない状態が続いたため、家族への精神的ストレスをかけてしまい、それに対する理解に感謝しています。

 

Kids&Usのシステム化されたサービス内容

Kids&Usに話を戻しますが、Kids&Usは世界の非英語圏で、子どもの英語能力向上において高い実績を上げています。それは教育・サービス業というシステム化が難しい分野において、品質を担保するための高レベルのシステムがあるためです。

このシステムの中には、日本の既存サービスにはない独自な点がたくさんあります。具体的には、入校に年齢制限を設ける等子どもの言語習得の臨界期を活かした手法、1から18歳までの18個のプログラムに代表される発達段階に合わせた精密なカリキュラム、講師の監査に代表される高レベルの品質管理、独自の口語テストを基にした定量点に加え細かい定性コメントも含む学習の効果測定、スクールや教材のデザインを含めた世界感、家庭学習との連動性を高めるためのデジタル教材、少人数制などです。日常的に英語に触れ続ける中で、週に1回のレッスンをアウトプットの機会として活用するためのシステム作り、そして何よりも英語でのコミュニケーション能力を育てるという点は、これまでの日本にはないものだと考えています。

 

資金繰り

資金繰りについては、これまでに築いた人脈のすべてを頼りに、ベンチャーキャピタルから中小企業、個人まですべての可能性を模索し、自分たちにとって最適な調達を行うことができました。過去の行動や発言はすべて未来につながっていくと良く言いますが、その通りだと思います。何年も前に私が語っていた夢を、覚えてくれている人もいるものです。夢や想いは、恥ずかしがらずに言い続けることの重要性を知りました。

 

直近の活動と今後の展望

2018年4月に日本での1校目、「Kids&Us Tokyo Sengawa」を旗艦校として東京都の仙川にオープンしました。これまでの日本にはないKids&Usのサービスを、より多くの日本の子どもたちに届けたいと考えています。まずは東京都からのスタートになりますが、出来る限り早いタイミングで全国展開していきたいと考えています。